北海道の道東、名前の通り大きな青い空と白い雲がきれいな網走郡大空町は、人口およそ7,780人。オホーツクの空の玄関女満別空港を擁し、網走湖、藻琴山、メルヘンの丘など、豊かな四季の自然に恵まれている。昭和26年に開校した北海道女満別高等学校は、勤労の「業」、勉学の「学」をそれぞれ表した「業学一体」(ぎょうがくいったい)の校訓のもと、60年にわたる歴史を築いてきた。少ない人数ながら生徒は熱心に勉強や部活動等に取り組んでいる。また、平成8年には、学校の敷地内に高齢者が利用できるパークゴルフコースが開設され、地域密着型の高等学校としても親しまれている。
■ 本校の進路状況
本年度は全体の3分の2の生徒が進学しました。例年、進学と就職が半数の割合となっていましたが、主な進学先は私立大学、短大と専門学校です。指定校推薦枠は、多くの生徒が利用しています。生徒数が少ない本校では推薦枠を競合することがないため、必死に学習する必要がなく、基本的な学習態度が確立していない生徒も少なくありません。学習意欲、学力の向上が望めない点が課題となっています。
就職については、町内や近隣地域を希望する生徒が多く、職種へのこだわりも強くありません。求人数は増えていますが、勤務地を重視するという傾向にあります。
■ 進路指導の取組
■1学年のキャリアノートの活用
1学年は、学校に早く慣れ、仲良く生活することを目標としています。進路に関しては、学力が低い、すべてに苦手意識が強くあきらめやすい、などといった生徒が多いため、自分自身を良く理解し、まずは自分に合った進路を模索する指導を行っていきます。
A 進路ガイダンスⅠ(高校生活について)
○目的:高校生として求められるマナーや身だしなみと、高校生活を充実させて送るためのよりよい生活習慣を身につけさせる。
○時期:4月下旬 2泊3日の宿泊研修③先輩からのアドバイス
教員の話より先輩からのアドバイスは素直に受け止められるので、部活のこと、欠席を増やさないこと、卒業後の進路のこと、学校行事への積極的な取り組みについて良く理解できていました。特に印象づけられたことは、成績に「1」がつくと進級、卒業ができないことでした。欠席が多いと成績にも影響し、義務教育とは違うことを認識させることができました。
④高校生活チャレンジプラン
将来の夢に向けて何ができるのか目標設定し、理由を考え、今年できることを前向きに取り組めるような様式になっています。具体的には、"将来の夢は・・・専門学校に進学して歌手になる→理由は歌が好きだから→1年間にできることは、歌の練習や身体を鍛える"など、現時点で進路希望がある生徒はしっかり書くことができていたようです。
○成果と課題
4月下旬の宿泊研修の進路の時間で『キャリアノート』を実施しましたが、時期的には、5月の連休明けで高校生活に慣れた頃のほうが記入しやすかったのではないかと考えています。6ページ以降の内容は、担任の意向に合わせてホームルームで使用してもらうと効果がありますが、場合によっては使い切れないこともあるので、十分時間をかけて打ち合わせをする必要があると考えています。
■2学年のキャリアノートの活用
B インターンシップ(インタビュー)
2学年では、就業体験を通して、より具体的に自分の進路について考えていくことを目標に掲げています。実際に働いてみて、時間をかけて慎重に準備をすることの大変さや、学校以外の社会人と触れ合い、会話をして、社会勉強をします。また、正式な電話のかけ方も指導していきます。
事前指導 インタビューの仕方
○目的:インターンシップでの言葉遣いや電話対応等のマナーを身につけ、実習中に担当者へ行うインタビューに生かす。
○時期:インターンシップ1ヶ月前
○資料:
『高校生のキャリアノート〈4.インタビュー職業人〉』使用
○内容:
①言葉遣いを練習しよう
実習の担当者に対しての挨拶、インタビュー、お礼のやりとりの会話を敬語に直すと、そのまま利用できました。文字で表すだけではなく、実際に会話の練習もできたら良かったと思います。
②インタビューの準備をしよう
実習の1週間前に、当日の内容や準備する物などについて実習先へ電話をかけて確認したので、事前に再確認することができました。準備シートに整理して、質問内容のレパートリーを増やしておくことも良かった点です。
③職業人インタビューまとめシート
インターンシップ実習後に「まとめシート」を利用して、実習内容を振り返り整理することができました。自己評価をして、新しい発見や「働く」意味について考えさせることができました。この結果をもとに、次年度は、就職希望者に求人票を選ばせることを予定しています。
○次年度への課題
心構え、言葉遣い、お礼状の事前・事後指導などは、国語科の協力が必要となりました。インタビューの仕方の指導は別途設定し、言葉遣いの再確認には時間がかかりました。また、今年は、実習の直前指導と重なってしまったため、指導が十分とはいえなかったように思います。次年度は、行事と調整しながら少なくとも1ヶ月前の実習に近い日に設定するなど、国語科への負担がかからないようにしっかり打ち合わせをして、充実した指導をしてもらえるよう改善したいと思います。
■ 3学年のキャリアノートの活用
いよいよ進路を確定し準備を進めていきます。せっかく就職したにもかかわらず、すぐにやめてしまうなどということがないように、メリットとデメリットの両方を理解した上で意思決定していくよう指導しました。
C 就職希望者向けガイダンス (仕事選びのステップ)
○目 的:昨年の求人票をもとに、近隣の就職状況を知り、自分の適性や希望にあった職種の探し方を学び、具体的な手続きの準備を行う
○時 期:5月の連休明け
○資 料:『高校生のキャリアノート〈17.仕事選びのステップ〉』使用
○内 容:
①仕事を選ぶ4つの視点
②求人票から仕事を読み取ろう
③仕事選びのステップを知ろう
④就職の条件を整理しよう
○次年度への課題
昨年度の求人票のコピーをもとに就職希望者への指導を準備していましたが、生徒たちの進路希望が全く決定していなくかったため(未定者が1/3)、進路面談を繰り返していたので時期を逃してしまいました。年度末には進路希望調査を配布し、家族で話し合ってくることを宿題にしたものの、未定者が多く保護者の記入もない生徒が多くみられました。また、進学希望であっても勉強したいことが未定だったり、保護者を説得できなかったりと個別の対応に追われました。結局保護者を説得できずに、今年の1月になって進学から就職に変更した生徒がおり、その後の就職指導も後手になってしまいました。
次年度は、進路について決まっていてもいなくても保護者と向き合わせる機会を設けることとしました。話し合いの仕方も生徒にアドバイスして、来年の5月までには進路希望調査に記入させるようにしたいと思います。
■今後の課題と抱負
本校の3年間を通したキャリア教育の柱である「2年生のインターンシップ」を充実させたいと思います。しかし、各学年の気質と基礎学力に差があるので、前年度の計画どおりにはいかないこともあります。実習の事後指導(実習のまとめと礼状書き)、発表会に伴う発表原稿作り、リハーサル、記録集作成など大変時間がかかったためで、今後の計画を練り直す必要があると考えています。
また、時間をかけているわりには、生徒の進路に対する意識を全体的に高めることができなかったのが反省点です。2学年で行うインターンシップの意義を1学年から指導し、インターンシップ発表会を参観して働くイメージをもたせ、2学年で意欲的に実習ができるように生徒の気持ちを促していきたいと考えています。この体験ができれば、3学年で自分の進路にも真剣に向き合えるのではないかと思います。
今年の3年生の進路はほぼ確定しましたが、反省点としては、夏休みが過ぎても希望進路未定者が多く、進路活動が遅くなってしまったことです。さらに、1、2年生の基本的な面接指導がほとんど身についていなかったため、最初から指導することになってしまったことも反省すべき点といえます。長い時間が経つと忘れてしまうので、次年度は、定期的に面接指導を行い定着させたいです。
現2年生は、勉強が苦手という理由で就職を希望する、目的・目標はないが進学を希望する、という生徒が多くみられます。また、特別な配慮を必要とする生徒が数名おり、保護者との面談を密に行い、関係機関と連携して進路指導をすすめていく予定です。指導の難しさが予想される次年度の3年生に、今から多くの指導を行い、来春には3年生全員の進路決定を目指したいと思います。