vol.5
2024年3月15日発行
①採用試験における適性検査
採用試験で行われる適性検査は、志望者がその企業の仕事内容に適応でき、十分に能力を発揮することが可能かどうかを見極めるために行われます。そのため、採用を決定する際の重要な判断材料となります。
●適性検査の種類
採用試験における適性検査は、主に能力検査と性格検査に分けられます。どちらか一方だけを行う企業もあれば、両方を実施する企業もあります。また、適性検査は多くの種類があり、採用試験を行う企業はその中から自社にあったものを選んで実施しています。SPI、一般職業適性検査、クレペリン検査が有名です。事務職採用向け、運転手採用向けなど、職種に応じた内容の検査もあります。
●適性検査の実施状況
採用試験における適性検査の問題は公開されていないため、それぞれの内容やどの程度の企業で実施されているかははっきりとわかりません。ただし、ある企業が採用試験にどの適性検査を実施するかは、求人票に書かれている場合があります。また、毎年同じ適性検査を実施している企業が多いので、過去の受験報告書が参考になる場合があります。受験した生徒には、できる範囲で出題内容を報告させるように指導するのがいいでしょう。
②主な適性検査の概要
●SPI
SPI(現在はSPI3)は、リクルートが提供している適性検査です。仕事をする上で必要とされる資質を総合的に測定しようとする検査で、人材採用時だけでなく、入社後の適材適所を目標とした配属先の資料として活用される場合もあります。直近1年間、全国で1万5,500社、受検者数約217万人(2023年9月調査:リクルートのホームページより)と、多くの企業の採用試験で実施されており、この分野でのシェアは国内トップといわれています。
以前は大企業とその関連会社、対象は大学生がメインでしたが、近年は中小企業や新興企業にも広がり(リクルート公表:約67%が従業員300人未満の中小企業での利用)、高校生の採用試験においても実施率が高くなっています。また、公務員試験においても、SPIを実施する自治体が市役所を中心に増えています。
SPIは、大きく分けて能力検査と性格検査に分けられます。能力検査では、企業の業務で要求されるコミュニケーション能力、数的処理能力や論理的思考能力などが測られます。受検対象や測定内容によっていくつかのタイプがあり、高校生対象の採用試験では主にSPI3-Hという検査が使用されています。問題内容は、小・中学校で習う国語、数学(算数)の基本的なものが中心ですが、SPI独特の形式を持つ問題も出題されます。
性格検査では、企業の求める人材かどうかの判断基準となる、受検者の考え方や行動パターンを行動的側面・意欲的側面・情緒的側面・社会関係的側面から測定します。
●一般職業適性検査
採用試験で用いられる一般職業適性検査とは、厚生労働省編集の適性検査です。円打点、計算、名詞比較、形態照合、記号記入、文章完成など、さまざまな検査で構成されています。かなりやさしい問題がほとんどですが、解答時間が短く、問題数は多いので、すばやく、正確に多くの問題を解くことがポイントとなります。
●クレペリン検査
クレペリン検査にはいくつか種類がありますが、代表的なものには内田式クレペリン検査があります。
クレペリン検査は、1ケタの数字の足し算を続けて行うという単純な作業を続ける検査です。その結果を基に、受検者の能力や、作業時の性格・行動の特徴を測定します。全体の計算量を基に能力を測定し、1分ごとの計算量の変化(作業曲線)、足し算の間違いを基に性格・行動の特徴を測定します。計算量が多い方が能力は高く評価されるので、すばやく、正確に作業をすることが重要です。
●その他の適性検査
「CUBIC(キュービック)」、「SCOA(スコア)」という適性検査も徐々に増えてきています。「CUBIC」は言語、論理、数理、図形、英語の科目があり、基礎編、応用編など難易度が設定されているため、企業の目的に合わせて組み合わせることができます。
「SCOA」は、知的能力や学力、事務能力を判定する検査などがあり、基礎的能力を測る検査は言語、数理、論理、英語、常識(社会・理科から出題)の5分野で構成されています。
そのほかさまざまな種類の適性検査がありますが、高卒を対象とする適性検査では基礎的能力を測定するものが一般的です。小・中~高校で履修した各科目の基礎をしっかりと復習し、対策問題集などで練習するように指導していきたいです。『SPI・常識テストプラス』(実務教育出版刊行)では「CUBIC」や「SCOA」などのさまざまな検査が体験できます。一度受験しておくことで、本番で戸惑うことなく検査に取り組めます。
③SPI能力検査対策
●能力適性検査の構成
SPIの検査のうち、性格検査は性格特性を測定する検査で、素直に飾らず答えるものです。本番で戸惑わないよう、1回程度市販の検査を実施すれば充分です。
一方、能力検査については、難問というような問題は出題されませんが、独特な出題形式を持つ問題が含まれているので、問題形式を事前に知っておくことが大切です。問題集の活用や、試験慣れのためにも、模試の実施などによる事前準備が高得点につながります。
能力検査(ペーパーテスティングの場合70分)は、言語分野、非言語分野に分けられ、以下のような構成となっています。
〇言語分野
・実施時間30分/50〜55問程度
・5~6つの選択肢からの択一式
国語的分野に関する出題です。企業の業務では、折衝や意思の伝達、文書作成等、言語を通しての活動が多いため、どのような仕事をする上でも必要とされる言語的理解力がどの程度備わっているかを測定します。
具体的には、対義語・包含関係といった語句に関する問題、要旨の理解や接続詞を問う長文読解等により、基礎的な語彙力や文章理解力を試す問題が出題されます。
〇非言語分野
・実施時間40分/40問程度
・8~9つの選択肢からの択一式
算数・数学的、論理的分野に関する出題です。企業では、経理だけでなく、企画、販売、生産管理等さまざまな部門で、統計的な処理・分析などの業務が不可欠であるため、数的処理能力や論理的思考能力を測る問題が出題されます。出題内容は、加減乗除など基礎的な計算問題や文章題、推論等で、小・中学校~高校1年生レベルの知識を用いて解くことができます。
●能力適性検査の特徴
〇「知識」よりも「知能」が問われる
採用する企業にとっては、仕事を進める上で必要な資質や能力が備わっているか、論理的に物事を考えて知恵を働かせられる人なのかが、採用する上での大切なポイントとなります。そのため、SPIの「能力検査」は、一般的な「知識の量」より「知能」が問われる検査と言え、より多くの知識を備えたものが高得点をとれるというものではありません。
例えば、言語分野の「2語の関係」の問題の場合、語句の意味についての正しい知識も必要ですが、言葉どうしがどのようなつながりを持っているのかにまで踏み込んで考えなくてはなりません。問題を解くには、知識だけではなく、判断力や応用力も必要とされます。
〇1問にかけられる時間が短い
言語分野も、非言語分野も、試験時間の割に数多くの問題が出題されます。単純に計算すると、言語分野は1問32秒、非言語分野は1問60秒で解かなければならないことになります。
〇独特の出題形式を持つ問題が含まれている
通常の学校の授業や試験ではあまりなじみのない、特殊な設問形式の問題が含まれています。本試験で初めてSPIの能力検査を目の当たりにすると、動揺してしまい、あまり解けずに終わってしまいがちです。事前の対策を行った場合と行わなかった場合とでは、結果がかなり変わってくるといえます。
本番で十分に実力を発揮するためには、問題形式を把握し、解答スピードに慣れておくことが大切です。試験直前の付け焼刃の対策ではなく、高校2年生から段階的に少しずつ問題集等に取り組んでいくことが、合格への大きなカギとなります。
④SPI能力検査攻略の基本の3Step
SPIの能力検査の攻略に向けて、指導のポイントを3段階に分けてまとめました。
Step | 指導のポイント | 対策教材 |
Step1 中学までの国、算・数の基礎知識を確認 |
・新聞や本を読ませる、作文を書かせるなど、さまざまな文章に触れる機会を増やし、語彙力、読解力をつけさせる。 ・高校前段階に学習した、公式などの基本的な知識を復習させる。 ・広範囲にわたる学習を効率化するため、出題傾向に絞り込んだ教材を活用。 |
『ステップアップ国・数・英』 『わかる!とける!基本の数学』 『はじめて学ぶSPI入門問題集』 『高校用SPI入門テスト』 |
Step2 基礎を固め、出題傾向に慣れる |
・数多くの問題を解き、独特な出題パターンや問題数に慣れさせる。 ・言語分野の長文読解も丁寧に読めば解答できるレベルのため、文章量や出題パターンに慣れさせる。 |
『基礎から学ぶSPIベーシック問題集』 『高校用SPI基礎テスト』 |
Step3 応用力と解答スピードを身に付ける |
・解法を身に付けて解答スピードを上げるため、傾向に沿ってまとめられた問題集により反復練習をさせる。 ・切り口の違う同じテーマの問題にも対応できるよう、さまざまな問題に取り組ませて、応用力・実戦力を養成。 |
『実戦レベルで学ぶSPI対策問題集』 『高校用SPI対策テスト』 |
※対策教材はすべて実務教育出版刊行物。