vol.2
2024年8月発行
①就職指導の重要なテーマ
●職業観・勤労観の育成
働く目的は、人それぞれの考え方があります。好きな仕事をすること自体が人生の目的となっている人もいれば、研究をするため、よい生活をするため、生きるため、または家族を養うための生活手段として働くという人もいます。「何のために就職するのか」という自分自身の働く目的の理解が必要です。
どのような就職であっても、「自分の職業に誇りを持てること」「自分の能力をよりよく活かせ、また向上させる仕事であること」をテーマに、前向きな職業観・勤労観の育成指導を進めていくことが大切です。
●自己理解
多くの人が、長い期間を職業人として生活していきます。よって、自分に合った職業を選ぶことが最重要です。そのためには、できるだけ早い段階から、自分の性格、得意・不得意分野、興味、適性などを具体的に考えさせていく指導が不可欠となります。
また、「適性がない」と思っていても、学習や訓練をすることで新たな特性や能力が開花することもあります。自分を伸ばせるかという可能性も含めて、個性や適性を考えさせるように指導することも重要です。1・2年次の早い段階で自己理解を促し、卒業後の人生をどう生きていきたいのか、適性を明らかにして具体的にイメージさせていきたいです。
●職業を知る
身近な商品を作っている企業、CMでよく見る企業以外にも、世の中にはさまざまな職業・企業があります。多くの選択肢の中から自分に合ったものを選ぶためには、職業や企業について、できる限り事前に調べ、理解しておくことが大切です。
まずは、過去の「求人票」を情報源として活用することができます。たとえば、全体のガイダンスとして「求人票」の見方について説明した後、「求人票」を見る際の注意ポイントをまとめたものを配布すると企業研究に役立ちます。また、最新の状況をチェックするために、多くの企業が自社のサイトを開設しているので、それらを利用することもあわせて指導します。
しかし、「求人票」や企業案内だけでは、企業の雰囲気や実態まで知るのは難しいです。そのため、職場見学やインターンシップを実施し、自分の目で見て体験させることが企業理解に最も効果的です。職場見学やインターンシップについては、地域によって状況が異なりますが、1・2年次に行う学校が多いです。
②2年次での指導
〇各種進路行事の開催
●LHRでの進路学習
LHR、総合的な探求の時間などを使い、自己理解の深化、職業観の育成、進路の選択・決定に向けての進路学習を行います。『進路ノート』や『キャリアノート』などの副教材(いずれも実務教育出版発行)は、生徒が主体的に作業をしながら授業を展開でき、高い学習効果が期待できます。
●進路希望調査
進路意識を高めさせるため、初めの進路希望調査は、早い時期(なるべく1学期中)に行うのが効果的です。就職希望者には業種・職種レベルまで希望進路先を意識させた調査にします。
●心理検査
客観的な自己理解・生徒理解の方法の一つとして、心理検査の実施があります。特に、進路指導では、生徒の性格、興味、能力を分析し、大学学部系、専門学校系、職業などへの適性を判定する進路適性検査を有効活用したいです。1年次前半、2年次前半に実施する学校が多いです。
進路適性検査には、進学・就職希望者両方に対応したものや進学希望者に的を絞った学部・学科適性検査、就職希望者向けの職業適性検査があります。いずれの検査も、生徒が自己理解を深め、進路を考えるきっかけ・学習への動機づけとして効果があります。
●体験学習
家族や親戚、卒業生への職業インタビューや、地域のボランティア、インターンシップなどさまざまなものがありますが、生徒が取り組みやすく消化しやすい初歩的なところから、段階的に体験学習のメニューを組立てておくのがいいでしょう。さまざまな体験を通して自分の能力や適性に気づき、自己理解を深めることができます。
〇面談
●個人面談(進路相談)
進路に関する個人面談は、生徒の自己理解の深化、問題の把握と解決に向けて、各学年で最低1回は生徒全員に対して行いたいです。
2年次では、1・2学期の始めに、進路希望調査、学業に関する資料、適性検査などの判定結果、学校生活に関する記録、過去の進路相談記録などを参考にし、進路について話し合う機会となります。
●三者面談
保護者を交えた三者面談は、進路希望調査や進路適性検査の結果をもとに行います。落ち着いて進路について話し合う機会を持つためにも、早い時期から定期的に行うことが大切です。
〇採用試験対策
●基礎学力の充実
学科試験・SPIなど、採用試験突破のためだけでなく、入社後の業務においても国語・数学・一般常識などの基礎学力は必須です。「簡単な漢字を書けない」「有名な地名なのに知らない」「簡単な計算ができない」といった嘆きが採用企業から聞こえてくることもあります。1・2年次の早い段階で、学力不足の生徒に対し基礎教科の学び直しを促すことが大切です。
基礎学力は、模擬試験・テストの実施を核に、問題集などによる繰り返し学習が効果的です。
●作文指導
「書く」ことによって、今まで見えなかったものが見えてきたり、考えを深めるきっかけとなったりするため、作文対策は自己理解にも非常に有効です。「書く」機会を多く与え、練習を重ねることで文章力も向上するため、早期からの継続的な作文指導を充実させたいです。
③3年次での指導
〇各種進路行事の開催
●進路ガイダンス
就職の心構えや採用試験の内容、選考開始までの具体的なスケジュールなどについて理解を深めさせる目的です。あわせて、卒業生や外部講師を迎えて進路講演会を実施すると効果的です。
●進路希望調査の実施
進路希望調査は4月の早い時期に実施し、志望する業界や職種の確認と、採用試験に向けての準備計画を検討させます。
●夏休みを利用した体験学習
「百聞は一見にしかず」という言葉があるように、直に職場の雰囲気に触れることで、そこで働く自分をイメージしやすくなります。志望する企業を実際に訪問し見学させる機会があれば、ぜひ利用したいです。ただし、このような職場見学については、事前選考につながるおそれがあり禁止しているケースもあるので、注意が必要です。
そのほか、自分の興味のある企業で働く先輩を訪ねる方法もあります。昼休みや業務終了の時間などで、細かい話をしてもらうとよいでしょう。先輩の好意で仕事現場を垣間見せてくれれば収穫です。その際にも、先輩から聞いた内容について報告書をまとめ、提出させるように指導したいです。また、企業案内を直接取りに行かせるだけでも、企業の雰囲気がわかり社会人と接するよい機会になります。
〇面談
●個人面談(進路相談)
進路に関する個人面談は、進路希望調査、学業に関する資料、適性検査などの結果、学校生活に関する記録、過去の進路相談記録などを参考にし、希望進路について具体的に話し合います。なお、必要に応じて再相談の予定を立てたり、後から連絡を取ったりなど、適切なフォローが必要です。
●三者面談
最終的な進路決定にかかわる三者面談は、生徒の希望と保護者の希望に食い違いが生じ、こじれるケースも見られます。このようなことを防ぐためにも、できるだけ早い時期に面談を実施し共通理解が得られるよう、落ち着いた話し合いの場が持てる配慮をします。
〇応募手続に関する指導
●求人票の見方
「求人票」の情報は、具体的な志望企業を選択するうえで最も重要なものです。自由に閲覧できる設備を整えておくと、生徒が自主的に情報収集を行うことができます。また、仕事内容や就業場所、労働条件などの重要事項を企業ごとにまとめたメモを作成させることで情報を整理することができます。その際、どの事項に注目しているかを生徒に意識させると、企業を比較検討する場合に役立ちます。
「求人票」の記載事項については、うっかり見落としたことで後々トラブルになることもあるので、十分に指導し、生徒自身で内容を確認させることが重要です。
●履歴書・志望動機の書き方
履歴書や応募書類の書き方も欠かせない指導の1つです。基本的な書き方を理解し、丁寧にしっかりとした文字で書くように指導します。特に志望動機については、履歴書の中で最も注目されるところです。面接対策としても重要なので、これまでの体験や自己分析の内容、職業調べ、職場見学などから、生徒本人の個性が出るような志望動機を考えさせるようにしたいです。
〇採用試験対策
採用試験の内容は、企業によってさまざまですが、学科試験、適性検査、作文試験、面接試験、健康診断と大きく5つに分類されます。多くの企業では、これらのいくつかを組み合わせて実施していますが、面接試験はほぼ100%実施されています。
●筆記試験対策
筆記試験には、国語、数学などの学科試験や、「職業適性検査」「クレペリン検査」「SPI」などの適性検査があります。早い段階から、模擬試験や問題集に取り組ませ、必要な基礎力、実戦力を計画的に養うことが重要となります。
●作文試験対策
「志望動機」「アピールポイント」「高校生活で力を入れたこと」「社会人としての心構え」など、作文試験でよく出されるテーマをひと通り書かせます。また、随時添削指導をして、読む人の立場に立ったわかりやすい文章を書かせるようにしたいです。
●面接試験対策
面接試験対策は、模擬面接を繰り返し行って、雰囲気に慣れさせることが重要です。事前に、よく質問される項目を整理して質問カードにまとめ、生徒に配布しておくとよいでしょう。
〇就職指導年間計画例