vol.2
2024年8月発行
国家一般職高卒の職種には、大きく分けて事務系職種(事務区分)と技術系職種(技術、農業、 農業土木、林業の各区分)があります。さらに、「事務」と「技術」はそれぞれ勤務地ごとに「試験区分」が分かれており、選んだ「試験区分」の地域内の機関に採用されます。一方、「農業土木」と「林業」の勤務地は全国各地となり、「試験区分」は1つです。※農業は、2019年度以降採用試験休止中のため詳細は不明。
●事務系職種
〈事務〉
各本府省庁および出先機関において、一般事務の職務に従事します。国家一般職高卒の場合、主に庶務、経理などのデスクワークが中心になりますが、採用官庁やその配属先によっては、実験の助手等、多様な職務に携わることもあります。
●技術系職種
技術、農業、農業土木、林業の4区分で試験が行われ、採用後はこれらの専門を生かした職務に就きます。
〈技術〉
主として、各省庁の出先機関において、専門性を生かした業務に従事します。たとえば、地方整備局等における河川、道路、公園、港湾、空港等の調査・計画・施工・管理、全国の気象台等における気象・地震火山などの観測・予報、地域防災支援、情報システム等に関する技術的業務が挙げられます。
〈農業〉
地方農政局等において、農畜産業の振興、食品の安全確保、土地改良事業の推進の技術的業務等に従事します。
〈農業土木〉
地方農政局等において、農業農村整備などの調査・計画・施工・管理の技術的業務等に従事します。
〈林業〉
全国の森林管理局等において、国有森林の保護・管理に関わる技術的業務等に従事します。
●一次試験
〈基礎能力試験〉40題90分・択一式
公務員として職務を遂行していく上で必要な知識・能力を有しているかをみるための筆記試験で、出題科目は「知識分野」(20題)と「知能分野」(20題)で構成されています。
「知識分野」は、社会科学(政治・経済・社会)、人文科学(日本史・世界史・地理・倫理・国語・英語)、自然科学(数学・物理・化学・生物・地学)、情報に関する問題が出題され、高校卒業程度のレベルです。
「知能分野」は、文章理解(現代文・古文・英文)、課題処理、数的処理、資料解釈の4分野で構成されています。
〈適性試験〉120題15分・択一式 ※事務のみ
事務職として求められる基本的な処理能力をみる試験です。「計算」「分類」「置換」「照合」「図形把握」の各分野から数多くの問題が出題されるため、スピードと正確性が求められます。
〈作文試験〉600字・50分 ※事務のみ
作文試験は、一次試験において実施されますが、その判定結果は最終合格者の決定の際の資料として、一次試験合格者を対象に反映されます。
〈専門試験〉40題100分・択一式 ※技術・農業・農業土木・林業のみ
各職務に必要な専門的知識や技術を備えているかをみる筆記試験です。
●二次試験
〈人物試験〉
人物試験は、全区分において「個別面接」の形式で実施されます。時間は15~20分程度、試験官は3~5人程度が一般的です。なお、人物試験の参考とするため、性格検査が行われます。
●最終合格から内定まで
「最終合格」=「採用」ではありません。二次試験合格者は最終合格者として、試験の区分ごとに作成される「採用候補者名簿」に記載されます。各官庁は、その「採用候補者名簿」の中から候補者に電話や文書で採用面接を受ける意思の確認をしたうえで採用面接を行い、内定が確定します。「採用候補者名簿」は得点順に記載されるため、高順位で合格することが大切です。名簿の有効期間は1年間で、その間に採用の内定を得る必要がありますが、採用の連絡がなければ、資格は失効することになります。
〈官庁訪問〉
採用面接に呼んでもらうためには、事前の「官庁訪問」が欠かせません。アポイントメントをとって志望官庁を訪問し、志望動機や仕事に対する熱意などを示し、積極的にアピールに努めることが、内定を得るための大切なプロセスとなっています。職務内容を紹介するための業務説明会やイベントが開催されるようであれば参加をし、情報収集をしておくことも大切です。
国家専門職試験は、特定の行政分野における専門スキルを重視する係員の採用試験です。勤務の特殊性から、税務職員および気象大学校学生以外は受験に際して身体基準があるので、あらかじめ基準に達しているかを確認する必要があります。採用後は、一定期間の専門教育を受けたのち、それぞれの官署に配属されます。
●税務職員
〈職務内容〉
採用地域の税務署などにおいて、国税の調査・徴収等の事務に従事します。
〈採用後〉
全寮制の税務大学校各地方研修所に入学し、必要な知識・技能などを習得するためにおよそ1年間の研修を受けます。研修内容は、所得税法・消費税法などの税法科目、簿記会計学、憲法・民法などの法律・経済科目、実務講義および実地研修等があります。
●刑務官
〈職務内容〉
拘置所、刑務所、少年刑務所において、被収容者の職業訓練指導や日常生活の指導などを行うとともに、施設の保安警備に従事します。
〈採用後〉
法務事務官看守に任命され、憲法・刑法などの法規、教育心理学・医学等の基礎学科、護身術・体育等の実科・実務についての職場研修、合宿研修を受けます。
●入国警備官
〈職務内容〉
各地方出入国在留管理局、入国管理センター等に配置され、不法入国や不法滞在等違反事件の調査、違反容疑者および被退去強制者の護送、設備の警備等に従事します。
〈採用後〉
地方出入国在留管理局などの官署で短期間勤務した後、全寮制の研修施設で約3か月間、基礎的な法律知識や外国語、逮捕術等の教育訓練を受けます。
●皇宮護衛官(高卒)
〈職務内容〉
皇居、御用邸等の警備や、天皇皇后両陛下をはじめとする皇族の護衛、国賓や外国の大公使の皇居参内時の護衛等に従事します。
〈採用後〉
警察庁の附属機関である皇宮警察本部に所属し、皇宮巡査に任命されます。最初の10か月間は皇宮警察学校において皇室に関する教養、憲法・行政法・警察法等の基礎学科、警察教練・拳銃操法・逮捕術等の教育訓練を受けます。
●航空保安大学校学生
航空保安大学校に入校し、「航空情報科」と「航空電子科」に分かれて2年間の専門教育を受けます。
〈航空情報科〉
航空機との無線電話通信、航空機の運用管理等の教育を受け、卒業後は「航空管制通信官」または「航空管制運航情報官」として全国の各空港、航空路管制施設に配属され、航空通信、航空情報の提供と運行管理業務に従事します。
〈航空電子科〉
一般教養、航空電子工学の各分野等の専門科目に加え、航空電子機器の操作等について教育を受け、卒業後は「航空管制技術官」として全国の各空港、航空路管制施設に配属され、管制情報処理システムの運用保守業務に従事します。
●海上保安大学校学生
海上保安大学校に入校し、本科学生として4年間、基礎教育科目のほか、航海・機関・情報通信、法律関係・海上保安行政関係等の専門教育を受けます。本科卒業後は専攻科に進み、4年間の集大成として練習船による世界一周遠洋航海実習を受け、幹部候補生として海上保安業務に必要な知識・技術を学びます。
その後、研修科国際業務課程(3か月)において、国際業務対応能力や実践的な海上保安業務に関する知識を習得し、初級幹部職員として巡視船等で海難救助、海上での犯罪の取締り等の業務に従事します。
●海上保安学校学生
海上保安学校に入校し、「一般」、「航空」「管制」、「海洋科学」の4課程に分かれて、英語、法学等の共通科目、および課程別の専門教育を受け、卒業後は海上保安庁の中堅職員として海上保安業務に従事します。また、所定の実務経験を積んだ後、海上保安大学の選抜試験を受けて特修科に進むことにより、幹部に登用される道も開かれています。
〈一般課程〉
教育期間は1年です。航海、機関、通信、主計、航空整備の5つのコースに分かれ、共通の基礎科目のほか、コース別に専門科目を受け、練習船による乗船実習も行います。また、コース別にそれぞれ取得すべき資格があります。
卒業後は、巡視船等の船舶の職員としてそれぞれ、運行操船(航海コース)、機関の運転・整備(機関コース)、通信の運用・保守(通信コース)、船内の調理・庶務(主計)、航空機の整備・搭乗(航空整備コース)などの業務に従事します。
〈管制課程〉
教育期間は2年です。共通の基礎科目のほか、情報通信、救難防災、通航管理等、運用管制官として必要な知識・技能を習得します。
卒業後は海上交通センター等で勤務し、船舶の安全な航行に必要な情報の提供、大型船舶の航路入航間隔の調整などを行います。
〈海洋科学課程〉
教育期間は1年です。共通の基礎科目のほか、海洋の科学的基礎資料の収集・解析等に必要な測量、天文、図誌等の科目を受け、練習船による海洋観測等に必要な知識・技能を習得します。
卒業後は海上保安庁または各管区海上保安本部等において、測量、海洋観測、海図の作成等の業務に従事します。
〈航空課程〉
教育期間は1年です。共通の基礎科目のほか、海象・気象、航空通信運用、ネイティブスピーカーとの英会話授業等、航空機の操縦に必要な知識・技能を習得します。
卒業後は一定期間の教育を受けた後、飛行機またはヘリコプターの操縦士として、海難救助、海上犯罪の取締り等の業務に従事します。
●気象大学校学生
気象大学校に入校し、4年間、気象業務の基盤となる気象学等の専門系列、数学・物理等の基礎系列、英語等の教養系列のほか、地震、火山、海洋観測等の実務訓練等、気象庁の幹部職員となるために必要な知識・技能を習得します。
卒業後は、気象庁、管区気象台、海洋気象台等に配属され、気象・地震等の観測、調査、予報、研究等の業務に従事します。
2024年度(令和6年度)国家専門職公務員試験の内容
特別職公務員の採用試験は、原則として採用機関ごとに実施されます。試験日程、試験内容等が機関によって異なるため、それぞれのホームページにアップされる「受験案内」等から情報収集を行う必要があります。 ※特別職公務員のうち、「防衛省一般職」については「国家一般職採用試験」の最終合格者からの採用となるため、ここでは割愛します。
●裁判所一般職(裁判所事務官・高卒)
各裁判所に配属され、「司法行政部門」の事務局において庶務・人事・会計等の一般事務や、「裁判部門」において裁判所書記官のもとで裁判事務に従事します。一定の年数を積むと、裁判所書記官になるための研修所への入所試験の受験資格が得られます。
●国立国会図書館一般職(高卒)
国立国会図書館において、図書館資料の収集や受入れ・整理業務および閲覧事務等の司書業務や一般事務に従事します。※2012年度以降採用試験休止中のため詳細は不明。
●衆議院事務局一般職(高卒)
衆議院事務局は衆議院の活動を補佐し、事務を処理するため設置されています。一般職高卒採用者は、一般事務(人事、会計、議員に関する事務、施設・設備の管理に関する事務等)に従事します。
●参議院事務局一般職(高卒)
参議院事務局の組織は、会議運営部門・調査部門・総務部門の3部門から成り、一般職高卒採用者は、一般事務(人事・会計等事務局の管理運営事務、議員に関する事務、会議録作成に関する事務等)に従事します。
●衆議院事務局衛視
衆議院事務局内の警務部に勤務し、衆議院内部の秩序保持のため、本会議場、委員会室等の警備ならびに議長、副議長、常任・特別委員長および議員、要人等の警護に従事します。
●参議院事務局専門職衛視
参議院事務局内の警務部に勤務し、本会議場、委員会室等議院内部の警備ならびに議長、副議長、政府要人、外国の賓客等の警護に従事します。
2024年度(令和6年度)国家特別職公務員試験の内容