石巻実業女子高等学校として創立し、平成26年には創立90周年を迎える石巻市立女子高等学校。桜やつつじで彩られる石巻市の名勝地「日和山」に位置し、その教室からの眺望は太平洋が一望できる。3年前の東日本大震災で甚大な被害を被ったが、地域からの大きな期待を受けて、平成27年度には「石巻市立桜坂高等学校」として新設統合される。
◆伝統ある女子高校として
本校は、大正14年に実業女学校として創立し、家政高等学校へ移行した公立の女子高校です。平成27年度には、石巻市立女子高等学校と石巻市立女子商業高等学校が統合して「石巻市立桜坂高等学校」が新設されるため、開校に向けて準備を進めています。
現在は、人文コース、生活コースの2コースがあり、「フードデザイン」「ファッションデザイン」「保育」などが学べる高校として、地域のニーズに応えてきました。女子校という環境の中で、生徒は伸び伸びと活動しており、リーダーシップを身につける生徒が多いのも本校の特色といえます。
◆本校の進路状況
本年度の進路状況は、大学・短大への進学者が60名、看護を含めた専門・各種への進学者は47名、就職者は54名と、ほぼ3分の1ずつに分かれます。この割合は最近10年間で大きな変化がありません。典型的な進路多様化校であるため、どの分野にも偏ることのない指導が求められています。
進学者の多くは、幼稚園教諭、保育士、看護師を希望しています。女子には人気が高く、資格を取得すれば安定した職業であるといえますが、イメージが先行し、将来を見誤るのではないかと危惧を感じています。しっかりとその職業についての研究をしたうえで、自分の力と照らし合わせながら進路選択ができるよう指導していきたいと考えています。
また、進学者のほとんどがAO・推薦入試で入学しています。そのため、エントリーシートや志望理由書、面接試験への対策指導が重要になっています。個別指導となるため時間はかかりますが、希望者は丁寧に準備を重ねることで合格へと結び付いています。
就職希望者は地元志向が強いのですが、震災以降は、石巻管内の求人が減少しています。しかし、本校は80余年という長い歴史があるため、地元の期待と卒業生の活躍により、地元の金融関係の事業所や事務職へ多数就職することができ、普通科女子高校の内定率で考えればかなり健闘しているといえます。
◆「総合的な学習の時間」を軸にした進路指導の展開
本校は、進路希望が多様なため、個々の希望に応じた、きめ細かな進路指導を行っています。進路プログラムの渉外や企画などは進路指導部が計画し、それを学年が主体となって運用しています。また、朝自習・課外講習などの運用も学年が主体となって力を入れている指導です。
しかし、新設統合に伴い、学科増による進路希望の変化や期待される進路の広がりは、今後の課題となっています。本校では、進路希望の多様さに即した文理分けの科目選択を行っていないため、カリキュラム的な面において進路指導の薄さが生じてしまいます。その点については、「総合的な学習」の時間で補っています。
◆『高校生のキャリアノート』を使用した進路指導の実践
進路意識のステップアップを図るために、年次を追って、総合学習のプログラムを計画しました。プログラムには『高校生のキャリアノート』の活用、「先輩に聞く会」の開催などを取り入れ、テーマに沿って指導しました。
〈各学年の進路指導のテーマ〉
1年生「自分を知る」
2年生「社会を知る」
3年生「進路実現」
●1年生〈4. インタビュー職業人〉
1年生には「職業を知る」プログラムにおいて『高校生のキャリアノート』を活用しました。入学後やっと落ち着いた時期ですが、高校生活の立脚点として「選択基準としての勤労観、職業観の確立」を目標に据え、まずは、"仕事を知ろう"ということから『高校生のキャリアノート』〈4.インタビュー職業人〉を活用しました。
キャリアノートは、インタビューの準備、マナーや言葉遣いまで、ややもすると指導が抜け落ちてしまいそうな点もしっかりフォローされており、「ねらい」を確認してから順を追って学習を進めることができます。
インタビューの相手は、船員、漁業、建築関係など、地域色の強い、女子はあまり興味が向かない職業が多いのですが、「働く」とはどのようなことかを見つめさせたり、改めて家族への感謝の念も育ませる契機にしたりと、有意義なものになっています。
●1年生〈21. 高校生活いきいき術〉
2つ目の大きなプログラムは、「人間関係形成・社会形成能力」の育成を視野に入れ、「秘書技能検定試験」を活用した人間関係トレーニングです。
「秘書技能検定試験」を活用することは、まだ進路に対する意識の低い1年生に対しても、社会との関わりの中で求められる能力について、資格取得までの学習によって知識を定着させていくことができます。
さらに、学校生活において円滑な人間関係を築くためのトレーニングとして、『高校生のキャリアノート』〈21. 高校生活いきいき術〉を活用しました。人間関係のトラブル回避や集団生活におけるマナーなど、高校生活に馴染んできたこの時期こそ適切なテーマだといえます。
●2年生 |
〈14.進学先をリサーチしよう〉 |
●3年生〈19.自己PRスキルズ〉
3年生になると個別指導が中心ですが、「面接」や「自己PR」の指導は学年全体で行います。主に進学希望者にはエントリーシートや志望理由書の記入の指導が、就職希望者には履歴書の作成についての指導が必要なため、『高校生のキャリアノート』〈19.自己PRスキルズ〉を活用しました。この〈19.自己PRスキルズ〉は、プラスのイメージになる例示が多く、具体的なエピソードを入れて表現する方法など、生徒に身につけさせたい内容がとても興味深いです。自己アピール方法の基盤を学習できる教材だと感じています。
◆今後の課題
本校では、総合学習を軸とした進路指導を行っていますが、AO・推薦受験者に対する学力保障や、女子のみの学校生活の中での強い集団意識をプラスに繋げていくこと、などが課題として挙げられます。また、新設総合が一年後に迫る今、不確定要素が多々ありますが、両校で目的・目標をはっきりと定め、生徒の希望を叶えられるよりよい進路指導を実現できるように、工夫し頑張っていきたいと考えています。