『高校生のキャリアノート』を活用した
進路学習の取組みについて

■ 本校の概要

 本校は、昭和26年の開校以来、67年の歴史を持つ伝統校です。所在地の浜頓別町は白鳥の飛来地として有名なクッチャロ湖のある自然豊かな環境で、産業は漁業・酪農が中心です。人口約3,500人、小学校は2校、中学校は1校、そして高校は本校のみです。全日制普通科2間口(昨年は3学年が1間口)の現在、在校生は138名、教員数20名です。教員のうち13名が教員になってから5年以下という若手が多い状況です。進路状況については、大学・専門学校・就職といった内訳です。

 

■ 本校の主な進路行事

 本校では1学年から3学年まで、柱となっている進路行事があります。下記の通りです。

(1)宿泊研修上級学校訪問(1学年)

 4月の宿泊研修時に旭川市内の大学や専門学校を訪問するとともに、そこで学んだことをまとめて発表する1分間スピーチを実施しています。

(2)インターンシップ(2学年)

 浜頓別町及び近隣市町村の企業の協力で、2学年全生徒を対象に8月に2日間のインターンシップを行います。実施後、学んだことをパワーポイントの資料を作成し、1学年、2学年の生徒の前で報告会として発表します。

(3)キャリア卒業研究(3学年)

 自分の進路に関する事や興味・関心のある分野について約3か月間で調べて、パワーポイント資料を作成して学年内で発表します。優秀者に選ばれた生徒は保護者や全学年生徒の前で発表し、3年間のキャリア教育のまとめとしています。

(4)その他 

①進路体験学習、職業分野説明会、高校内企業説明会
 大学や専門学校から講師を招いて、体験学習を実施しました。公務員志望生のためには公務員専門学校の講師を、医療系志望生のためには医療系専門学校の講師を招き、模擬授業を実施していただきました。調理系専門学校の講師には実際に調理をしてもらい生徒も実際に調理をしてみる。といった、体験的授業を行いました。
 また、インターンシップでお世話になっている近隣の企業の方に高校に来ていただき、実際の仕事内容の説明や、社会人として求められていることは何か、といった説明をしていただいています。企業様からも好評なので、次年度以降も行っていきたい行事です。

②進路講習
 本校は一番近いJRの駅まで車で一時間、都市部へのアクセスが不便で、なかなか進学塾や予備校の夏期講習などに行けないので、予備校講師を本校に招いての進学塾講習を行いました。この予備校体験授業は浜頓別町の協力で今年度は2回開催して非常に好評でしたので、こちらも次年度以降開催していきたいと思っています。

〈1分間スピーチ(1年生)〉

〈インターンシップ(2年生)〉

〈キャリア卒業研究全体発表(3年生)〉

〈高校内企業説明会〉

 このように、色々な取組みをしております。そして今年度は『高校生のキャリアノート』を活用した進路学習を実施しましたが、取組むにあたって、本校の進路状況が重要になってきます。
 下記の通り、大学・短大、専門学校、就職のそれぞれが3分の1ずつ、簡単に言えば進路多様校といった状況です。一橋大学に進学するような学力層の高い生徒もいれば、読み書き計算がほとんど出来ない学力の低い層もいる、多様な進路状況に対応するために、『高校生のキャリアノート』をどのように活用するかが課題となりました。

〈本校の進路状況〉

 

■ 『高校生のキャリアノート』を活用した進路学習について

(1)実施にあたって

 ①対象学年

1学年(2クラス全46名)

 ②実施方法

総合的な学習の時間のうち5時間を進路学習の時間とし、進路指導部長が担当者として進路学習を展開し、担任がサポートに入る形式で実施。

 ③留意事項

本校ですでに実施している進路行事や毎年参加している説明会等の日程を考慮して、その直前に進路学習ができるよう、テーマや日程を調整して実施。

(2)1学年の主な進路行事

 黒文字が今まで行われていた行事、青文字が今年度新たに実施したもの。赤文字が、今回行った「進路学習」です。進路行事の直前に進路学習をセットで実施、リンクさせて展開していく形にしました。

 

■ 『高校生のキャリアノート』を活用した進路学習の実践

 私と担任と二人で実施したのですが、授業サポートガイドが付いていて指導方法が明示されているので、下記のように授業計画を立てて行うことが出来ました。所要時間は50分のコマで実施する場合について明示されており、とても使いやすく、うまく展開できたと思います。
 『キャリアノート』は書き込み式で、生徒が書きながら自分をみつめる自己を理解する内容ですが、読み書きが苦手な生徒でも書けるようにヒントが付いています。

①第1回進路学習(平成29年5月18日)
『キャリアノート』《テーマ2. 入門 自分発見》
 重点:「自己分析と目標の設定」1年間の進路学習の説明。進路目標と科目選択の関連性。

 直前に実施した適性検査について重要性に触れ、これからの1年間でどんなことをするか説明しました。6月に科目選択をするにあたり、進路目標との関連性を指導しました。まずは自分で記入してから友人と交換して評価し合うことで、客観的な自己分析により自己理解を深められました。

〈テーマ2. 入門 自分発見〉

〈キャリアノート テーマ2. 〉

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②第2回進路学習(平成29年7月13日)
『キャリアノート』《テーマ3. 職業 いろいろ発見》

③第3回進路学習(平成29年10月19日)
『キャリアノート』《テーマ6. 進学 いろいろ発見》
 重点:職業や上級学校について理解。進路行事への積極的な参加を促す。
 第2回と第3回は就職と進学のテーマですが、就職するつもりが進学することになったり、進学する生徒もゆくゆくは就職するのだから、あえて進路別に分けずに、それぞれの理解を深めるよう全員で学習しました。第2回は翌日「職業分野説明会」が開催される日程で、第3回は翌週に専門学校の進学相談会が開催される日程で行い、行事に参加する意識が高まるよう指導しました。
 本校は立地的にアクセスが悪いため例年は自由参加で少なかったのですが、昨年よりも10名以上参加者が増えて『キャリアノート』により進路行事への積極的な参加を促すことが出来ました。

〈テーマ3. 職業 いろいろ発見〉

〈キャリアノート テーマ3.〉

〈テーマ6. 進学 いろいろ発見〉

〈キャリアノート テーマ6.〉

④第4回進路学習(平成29年12月21日)
『キャリアノート』《テーマ12. 職業 リアル体験》
⑤第5回進路学習(平成30年3月2日)
『キャリアノート』《テーマ9. レッツスタート高校2年生》
 重点:2年生に向けての準備。

 高校1年生のうちから2年生に向けての準備をしてもらうためのテーマです。第4回のテーマは、本来ならばインターンシップに行く2年生で行うところ、職業について考えながら準備をさせようと、あえて1年生の終わりに実施しました。
 第5回のテーマは、2年生になるにあたり高1の一年間はどうだったか振り返ってもらいました。
一年間の成長記録をチェックするWORK1が有意義でした。必ずしも進路に関することでなく、部活動・勉強を頑張った、友達のこと、一年間の基本的な生活習慣を振り返るという内容で非常に使いやすかったし、2年生になってからの行動目標が明確になりました。進路については、いま現在の「進路目標」を書くページがあって、2年生になったらどのような取組みをすべきか、意識づけに良いと思います。

〈テーマ12. 職業 リアル体験〉

〈キャリアノート テーマ12.〉

〈テーマ9.  レッツスタート高校2年生〉

〈キャリアノート テーマ9.〉

〈クリックで拡大〉

 

まとめ

(1)良かった点

・『キャリアノート』を活用した進路学習を展開したことによって、生徒のキャリア(進路)に関する意識が非常に高まりました。これまではただ漠然と就職する生徒が多く、一年も経たずに辞めてしまう生徒もいました。生徒は進路について深く考える機会が与えられて将来について悩み、悩んだ結果なかなか方向性が定まらない状況も出てきました。その悩みを解消していく、進路を確定していく作業は2年次以降に引続きキャリアに関して考える、実際に体験する機会を提供したいと考えています。

・進路学習と既存の進路行事をセットで実施する事で、生徒の進路行事への積極的な参加が見られました。非常に良かったです。

・本校のような進路多様校であっても、テーマの選定によって有意義な進路学習を行えました。また、授業サポートガイドは指導計画を立てる上でとても便利でした。

(2)反省点

・通常の授業は20数名で行っていますが、2クラス合同の46名で実施したために私も生徒も慣れておらず、50分の授業時間では時間が足りなくなり、アンケートをとる時間がありませんでした。そこが一番の反省点です。やはり次年度以降はアンケートを実施してその結果を事後指導の参考にしたいと考えました。

・テーマの選定や実施時期について考えて実施しましたが、次年度はもっと考慮する必要があります。2年生に向けた内容の第5回《テーマ9. レッツスタート高校2年生》は非常に良かったと実感していますが、第4回《テーマ12. 職業 リアル体験》について、1年生の12月実施は少し早かった。3月末か2年生の4月か5月が妥当だったと反省しています。2年生の8月にインターンシップに行くので、その直前に改めて振り返りを行いたいと思っています。

(3)今後の取組み

・授業サポートガイドに指導方法が明示されているので、教育経験や指導経験が少ない教員でも授業展開し、十分に効果的な進路学習を実施出来ると思います。次年度以降も、本格的に『キャリアノート』を活用した進路学習について検討したいと考えています。

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